家族信託について


1,家族信託とは

認知症になると預金口座が凍結したり、大事な契約が出来なくなるなど様々な不都合が生じます。
そんなときのためにあるのが「成年後見制度」です。
ただし、成年後見制度ではカバーできない部分があります。例えば、積極的な運用などです。成年後見制度は被成年後見人である本人を守ることが前提なので節税や資産を増やすなどリスクのある積極的な運用は出来ません。また相続対策として遺言がありますが、アパートやマンションなどの収益不動産を配偶者が相続したが認知症のため管理することが出来ないといったケースも想定されます。
このような場合、家族信託を使うと積極的な運用も出来るしアパートやマンションから受け取る収入は配偶者が享受でき、賃貸経営の管理は子供に任せることも出来ます。家族信託は様々なことをカバー出来る夢のような選択肢に聞こえますが、費用もかかりますし、押さえておくべき注意点もあります。


【押さえておくべき注意点】
➀他の制度との比較
➁利用の流れ
③家族信託の税金
④どのように活用するかなど



2,家族信託の概要

1,家族信託の概要
まず、家族信託を検討するうえで押さえておかなければならない用語があります。
家族信託を初めてご検討するかたには聞き慣れない言葉ばかりなので覚えにくいと思いますが、検討を重ねるうちに覚えていきますから全体像をぼんやりと掴むところから始められたらと思います。
最初に家族信託に頻繁に出てくる7つの用語があります。


【家族信託7つの用語】

用語 用語の意味 活用例
➀委託者 

家族信託の契約をすることで
財産を預ける人

➀委託者である父親が、所有するマンションの
 賃貸経営を長男に任せたいと思っている
    ▼
➁家族信託契約の締結
    ▼
委託者:父親信託財産:賃貸マンション
 受託者:長男  受益権 :マンション管理収入
 受益者:父親  

委託者:父親
受託者:長男
受益者:父親

➁受託者

委託者から財産を預かり
管理する人

受託者:長男
受託者である長男は所有者として当該賃貸マンショ
ンを管理します

③受益者 

委託者が受託者に預けた財産から
経済的な利益を受ける人

受益者:父親
④信託財産 

委託者が受託者に預ける財産で
家族信託では現金・不動産が多い

信託財産:賃貸マンション
⑤信託目的 

何のためにこの信託が設定されているか?
という目的

⑥受益権 

委託者が受託者に預けた財産が生み出す
経済的な利益を受けられる権利

受益権=マンション管理収入
受益者である父親が受益権である
マンション管理収入を受取ります

⑦信託行為 

信託を設定する方法で
➀契約
➁遺言
③信託宣言
の3つがあります

このような契約を結ぶことで委託者・受益者である父親が認知症になったとしても、受託者である長男が賃貸マンションを運用することができ、その結果、受益者である父親が利益を受取ることが出来ます。このように賃貸マンションを管理することを信託目的として契約という形で信託行為を行います。このように信託の用語を使いますが、信託の用語の意味がわからなくなったら上記の表をご確認ください。
この家族信託ですが、2007年の信託法の改正の時に今の形で利用できるようになりました。実はその前から信託制度は利用されていましたが、家族信託ではなく、商事信託が主に使われていました。

商事信託は、
信託銀行や信託会社が行う信託で、財産管理のプロに管理・運用を任せることができ安心である反面、かかるコストが高いという問題点がありました。また信託財産が信託銀行の場合は主に金銭で、信託会社の場合は金銭以外に不動産も取り扱いましたが「大都市圏などの管理がし易い不動産」に制限されるなど制約があり、気軽に利用できる制度ではありませんでした。
この点で家族信託制度は「管理がし易い不動産」といった縛りもなく、受託者に親族がなることで信託銀行や信託会社にコストをかけることなく、信託制度を利用することが出来ます。



商事信託

プロとして受託者となり受託行為をおこなう
誰が▶信託銀行、信託会社

家族信託

プロではない立場で受託者となり受託行為をおこなう
誰が▶親近者

3,他の制度との比較


【家族信託以外の選択肢1】

選択肢 存続期間 制度の主旨 権限・内容 契約方法 財産の積極的運用処分 自宅等の処分

成年後見制度


被後見人
判断能力が下がり、
制度を利用する本人


後見人
判断能力が下がった
被後見人をサポート
する人

後見開始から
本人の死亡まで

法定後見
制度を利用する際、既に判断
能力が下がっている人を支援
するための制度



認知症、知的障害、精神障害
など

財産管理・法律行為の代理、
取消し、同意、身上監護

家庭裁判所に申立て
を行い家庭裁判所の
審判という形で後見
人が決定します。
申立ての際に候補者
を希望することは出
来ますが、決める
は家庭裁判所になり
ます。

財産を維持
し、本人の為
にのみ支出す
ることができ
る。
積極的な投
資、運用や合
理的な理由の
ない換価処
分、生前贈与
は不可。

介護費用の捻出
のためなど合理
的な理由があれば可能。
ただし、家庭裁
判所の許可
となります。

任意後見監督人の選任から本人または任意後
見人の死亡まで

任意後見
まだ判断能力がある人が認知
症になった場合などに備えて
予め自身で後見人を選び頼み
いことを決めておく制度



財産管理・法律行為の代
理、同意、身上監護具体
的には契約により内容を


決定ただし、取消権はな

本人が判断能力があ
るうちに公証役場に
て任意後見契約を締
結。判断能力低下後
に家庭裁判所に申立
てを行い任意後見監
督人が選任されるこ
とで任意後見が開始
となります。
特約を付帯すること
で死後の事務を委任
することも可能。

法定後見と基
本的に同じ。
具体的には契
約書により内
容を決定しま
す。

家庭裁判所の許
可なく、処分が
可能。ただし、
善管注意義務に
はかり、売却す
ることが求めら
れます。

家族信託制度

始期も終期も契約に
より設定が可能

家族信託
信託契約を締結し財産管理を委託契約は主に公証役場で行います

財産管理


家族信託と任意後見契約
を併せて行う場合も多く
あります。


受託者の責任と判断で、
自由に運用、処分が可能。
ただし、受託者が受益者
に変わって生前贈与をす
ることは不可能。


〈受益者連続型信託〉
契約当初の受益者が亡く
なった後も次の受益者を
設定することにより、家
族信託を継続させることができます。
法定後見、任意後見制度
では出来ない契約内容。

信託契約の締結契約
は主に公証役場で行
います


受託者の責任
と判断で、信
託目的に沿っ
た自由な運
用、処分が可能。
ただし、受託
者が受益者に
変わって生前
贈与をするこ
とは不可です。

受託者の権限内
であれば、自由
に売却すること
が可能。

遺言
委任契約
配偶者居住権







【家族信託以外の選択肢2】

選択肢 本人がした契約への対応 本人死亡後の相続手続 監督機関 財産管理者の報酬 期間中のランニングコスト

成年後見制度


被後見人
判断能力が下がり、
制度を利用する本人


後見人
判断能力が下がった
被後見人をサポート
する人

成年後見の場合、取消し
できる。ただし、補佐と
補助の場合はできない。

本人の死亡により後見
手続きが終了します。

家庭裁判所または
後見監督人

家庭裁判所により
決定される。

職業後見人の
場合、本人の
保有資産、業
務内容によ
り、月々1.5万
円~6万円程
度。


親族後見人に
後見監督人が
つく場合は、
月々1~2万円
程度。

家庭裁判所に選任された
・弁護士
・司法書士
・行政書士
などの士業の後見人が、選任されることが多いですが、
使い込みによる事件も毎年報告されているため厚生労
働省による「成年後見人利用促進専門家会議」において
身近な親族を後見人にすることが望ましいという方針が
出ています。
『選任割合〉
士業:約8割 親族:約2割 近年親族が増加傾向にある

できない

本人の死亡により後見
手続きが終了します。

任意後見監督人

任意後見監督人により
決定される。

任意後見人に
対しては、後
見契約により
設定します。


任意後見監督
人の報酬は
月々1~2万円
程度。

認知症などになり、判断能力が下がったときに家庭裁判所で
所定の手続きを行ったうえで開始されます。任意後見
人の仕事ぶりをチェックす
る任意後見監督人が家庭裁
判所により選任されます。

家族信託制度

取消権はないが、信託財産
は受託者が管理している。

口座凍結もせず手続き
が可能。
本人死亡後も継続的な
管理をすることも可能
です。

監督機関はない
が任意で信託監
督人を設定する
ことができる。

信託契約で設定する。

受託者に対し
て、信託契約
により設定し
ます。

法定後見、任意後見制度では出来ない
➀有価証券を売る・買う
➁不動産を売る・買う
③通常の不動産の修繕など


委託者の財産を積極的な運用行為が可能

遺言
委任契約
配偶者居住権

4,家族信託の流れ





5,家族信託の税務





6,家族信託の活用例